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2017年11月28日 (火)

『経験から学ぶ人的資源管理〔新版〕』演習問題の出題意図と解答のポイント:第8章

このページでは

上林憲雄・厨子直之・森田雅也/著
『経験から学ぶ人的資源管理〔新版〕』
2018年1月刊

第8章の「演習問題」の出題意図と解答のポイントを掲載いたします。

〔1〕32で説明されているとおり,基本給には「人基準賃金」(年功給と職能給)と「仕事基準賃金」(職務給と業績給)の2種類がありました。それぞれの特徴については,32の(1)の記述内容をもとに,表に整理してまとめると,違いが明確となって良いでしょう。ごく簡単には,人基準賃金は長期的な人材育成と柔軟な配置・異動ができること,仕事基準賃金は貢献度と給与を連動させることが可能な点にメリットがありました。一方,デメリットには,人基準賃金は年齢や勤続年数に比例して給与が上昇することに納得感が低下したり,人件費が上昇したりすること,仕事基準賃金は短期的な視点で仕事と進めてしまうことや,配置異動の柔軟性に欠けることが挙げられます。また,人基準賃金と仕事基準賃金を組み合わせた賃金体系には,「範囲職務給」と「役割給」が存在します。基本的には,両者とも人が仕事の価値や成果を創出・拡大することを考慮に入れた賃金決定の仕組みである点に着目してまとめると良いでしょう。

 

〔2〕人事部へのインタビューや,人事制度に関する社内資料をもとに,所属組織の賃金体系を調べてください。ただし,難しい場合は,自分の給与明細書を分析するようにしてください。また,〔1〕でまとめた,人基準賃金と仕事基準賃金の特徴に照らし合わせながら,自社の賃金体系を分析することがポイントです。問題点が抽出された場合には,解決策まで提示できれば望ましいです。仮に全社一律の賃金体系が導入され,給与に対する従業員の満足度が低下しているケースでは,個人のキャリア・ニーズを考慮に入れた賃金体系を設計することが一案です。ただ,どのような賃金体系を選択しようとも,人事評価の結果との整合性が求められますので,第7章で学習した人事評価の4つの基準との連動のあり方にも着目しながら,考えるようにしましょう。

 

〔3〕仕事基準賃金をグローバル・スタンダードとして運用していく際に直面する課題は,①職務給の設計原理に関する日本人の理解,②海外派遣者の給与決定に購買力保障方式を用いることの妥当性の根拠が挙げられます。①について,『労政時報』第3925号(2017224日)のグローバル共通の職務等級制度を導入したトレンドマイクロの事例に表れています。特にグレード数が少ない場合,欧米諸国の地域の社員とは異なり,同一グレードでの在籍期間が長くなると成長を実感しないという声が日本人社員から上がっているようです。また,多くの日本企業では管理職系統と専門職系統に分かれた複線型人事制度が採用されていますが,トレンドマイクロでは「専門職より管理職の方が上」という観念が日本本社において強く,そうした観念を払拭する必要性が指摘されています。仕事を変わらなければ処遇に変化がないことや,管理職,専門職のラダーに関係なく,同一労働(役割)価値なら同一賃金であることの丁寧な説明が日本人の従業員に対して不可欠になります。②に関して,日本本社からの海外派遣者の給与決定に適用される多くが,日本で勤務していた時の給与水準をベースに,本国での生計費を海外の赴任先でも補償する「購買力補償方式」です。「バランスシート・アプローチ」とも呼ばれます(Lussier R. N. & Hendon, J. R.2017Fundamentals of Human Resource Management: Functions, Applications, Skill Development, Sage Publications, p.365)。この手法は派遣者にとっては派遣前後で生活費に支障をきたさないメリットがありますが,同じ仕事をしている現地人材との間に給与に格差が生じてしまいます。これは同一労働同一賃金という仕事基準賃金の原理原則に反します。もちろん,海外生活での苦労や家族を日本に残していく場合2重の家計になることに配慮することは重要です。しかし,企業はその補填がどの程度正当性を持つものなのかの精査をしなければなりませんし,正当性の根拠を国内外で共有することが仕事基準賃金を処遇の基本枠組みにするうえで求められるでしょう。なお,以上の論点は,第134節で述べた転居転勤のリスクが限定正社員と無限定正社員の給与格差の論拠となっている構造と類似していますので,併せて検討を加えてみてください。

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