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2010年12月 1日 (水)

『入門・日本経済』第11章(貿易) 練習問題解答

1 日本の貿易構造は近年,急速に変化しているといわれる。その特徴を簡単に説明せよ。

(解答例) かつて日本は,原材料や食糧を輸入し,国内の労働や資本を使ってそれらを加工し,製品を輸出するという典型的な加工貿易を行っていた。しかし最近は,製造業が生産工程の一部を外国(とくに東アジア諸国)に移転し始めたため,外国で生産した部品や最終製品の輸入も増えている。それに伴って,日本でも産業内貿易と製品輸入比率が急増している。


2 比較優位に基づく貿易構造とは何か。また比較優位構造を決める要因にはどのようなものがあるか。

(解答例) 比較優位とは,財・サービスの絶対的な価格水準の違いではなく,相対価格の相違によって貿易構造が決まるという考え方である。2国・2財からなる世界経済を想定すると,各国は互いに相対価格の低い財・サービスを輸出することになる。リカードの比較生産費説によれば,国内の産業間の相対的な技術水準によって相対価格が決まるので,各国は相対的に優れた技術をもつ産業の財・サービスを輸出する。ヘクシャー・オリーンの要素賦存比率理論によると,相対価格の違いは労働や資本などの生産要素の供給量の国際的な相違から生じており,たとえば資本豊富国は資本集約的な財を輸出する。


3 貿易摩擦への対応策としてどのようなものがあるか。また,なぜそのような対応策が用いられてきたのかを簡単に説明せよ。

(解答例) 1980年代の中頃までは,輸出の急増から生じる貿易摩擦に対応するのに輸出自主規制(VER)が頻繁に用いられてきた。輸出自主規制は,輸入国側の政府からの要請により輸出国側の政府が,問題となっている輸出産業に対して輸出数量の割当を行うものであった。しかし,この輸出自主規制はGATTのウルグアイ・ラウンドにおいてその発動が禁止されたため,近年では,ダンピングに対して割増しの関税を課すアンチ・ダンピング措置や,輸入の急増に対して割増しの関税を課すセーフガード措置などが摩擦を回避する手段として用いられるようになってきた。


4 近年,FTAが増加した理由と,FTAの長所・短所を簡単に説明せよ。

(解答例) 近年,加盟国の増大や交渉でカバーする分野の拡大などによって,WTOによる多角的貿易交渉の妥結には非常に長い時間と労力を必要とするようになった。そのために,比較的交渉が容易で妥協点を探りやすい2国間や地域間のFTAを締結する動きが活発化してきた。FTAの長所としては,域内の貿易障壁の削減により域内の貿易取引を活発化するという貿易創造効果や,それによって競争が促進される競争促進効果などがある。短所としては,域外の効率的な生産者からの輸入が排除され,域内の非効率な生産者からの供給が増加するという貿易転換効果があげられる。

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