『入門・日本経済』第12章(農業) 練習問題解答
1 「農業は相対的縮小を運命づけられている産業だから衰退産業である」という説は正しいか。
(解答例) 一国の経済は資本蓄積が進むにつれて工業部門が拡大するが,農産物の需要は「エンゲル法則」により所得が増えるほどには増えない。したがって,農業は工業部門などに比べて相対的に縮小する傾向にあることは正しい。しかし,食糧需要がなくならないかぎり,農業は産業としての存立基盤をもつのであり,自然に衰退し消えていく産業とはいえない。また,農業からの資源移動が十分行われれば,生産要素の報酬は他産業と等しくなるはずであり,衰退産業と呼ぶのはあたらない。
2 「食糧問題」と「農業問題」とは何か。それぞれの問題解決に有効な政策手段を考察せよ。
(解答例) 「食糧問題」とは人口増加や1人当たり所得の増加に伴って食糧需要が増え,一方で投資不足などでそれに見合う食糧供給が得られず,食糧価格への高騰圧力が構造化している途上国の問題をいう。「農業問題」は逆に需要の伸びに比べ食糧生産が技術進歩や社会資本の整備により大きな増加を示し,価格下落圧力が恒常化する先進国に共通する問題である。いずれの場合も価格が問題とされるがその解決には,市場介入で価格を操作するのではなく,食糧問題には食糧生産増大のための投資,農業問題には離農・転職への補助といった供給曲線のシフトに働きかける政策の方が有効である。
3 日本農業の構造上の特徴とその背景について述べよ。
(解答例) 日本農業の特徴は,農業就業人口が大きく減少したにもかかわらず,農家戸数はあまり減少せず,1戸当たりの経営規模が零細なままとどまっていることである。この背景には農村地域での在宅兼業機会の増大,小型機械化による農業労働の省力化,高価格政策による非効率農家の温存などがあげられる。
4 農業の国際化の経緯をWTO農業協定と国内農政の変化を対応させて論じよ。
(解答例) 略(本章第4,5節を参照)。
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