『入門・日本経済』第13章(地域経済) 練習問題解答
1 都市における①規模の経済②集積の経済について,具体例をあげて説明しなさい。
(解答例) ①「規模の経済」とは,生産あるいは需要量が大きくなるに従い平均費用が低下する状況を意味する。都市における規模の経済の例としては,社会的共通資本(たとえば道路,鉄道,公園,通信,教育,医療,図書館など)のように,人口集中により利用者が増大しても,ある程度までは総供給費用はあまり変化せず,1人当たり平均費用が低下する財・サービスをあげることができる。
②「集積の経済」は2種類に分けることができる。
a. 同じ業種の企業が特定地域に多数集中する場合(たとえば東京秋葉原や大阪日本橋の電器店街),購入者にとっては,各地をめぐり歩く必要もなく交通および情報収集に便利で,しかも競争で価格も安い。販売者にとっては,宣伝効果と集客力が大きく,特色ある商品揃えができる。
b. 異業種企業が特定地域に多数集中する場合(たとえば東京都大田区の下請企業群),生産技術の補完性と量的安定性が向上し,異業種交流など情報収集費用の低さから新しい企業の発生の可能性が高まる。
2 2つの地域(A,B)から構成される経済を考える。両地域の人口合計は一定で,他地域との人口流出入はないものとする。A,B両地域間の人口移動が1人当たり所得格差により発生するとき,2地域の人口規模はどのように決定されるか。なお1人当たり所得は,当初A地域の方がB地域より大きいものとする。
①両地域ともに,人口が増大すると生産性は逓減し,1人当たり所得が低下するとき
②両地域ともに,人口が増大すると規模の経済が働き,1人当たり所得が上昇するとき
(解答例) 1人当たり所得がA地域の方が高いため,B地域からA地域へ人口移動が生じる。
①限界生産性が逓減する一般的なケースでは,A地域へ人口が流入するとA地域の1人当たり所得が低下する。一方,B地域では人口流出で1人当たり所得が上昇し,この結果,両地域の所得格差がなくなったとき,人口移動も停止する。
②規模の経済が働くケースである。このときA地域へ人口が流入すると,A地域の1人当たり所得が上昇する。一方,B地域では人口流出で1人当たり所得が低下し,この結果,両地域の所得格差が拡大し,B地域の人口がすべてA地域へ移動してしまうまで人口移動が続く。A地域に一極集中する。
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