『入門・日本経済』第10章(国際金融) 練習問題解答
1 通貨の交換性とは何かを説明せよ。
(解答例) 本章の第1節を参照してまとめればよい。われわれは通貨の交換性が十分ある社会に住んでいるので,交換性がない社会がいかに不便かをなかなか想像できないが,物々交換しかできない社会と貨幣を通じる交換が可能な社会とを比較するなど,適当な事例を考えて説明するとよい。
2 理論的に考えた場合,資本の国際移動性の高度化は為替レートの変動を激化させるか,それとも安定化させるかについて答えよ。
(解答例) 国際資本移動の高度化が為替レートの変動を安定化にどう影響するかについては,古くから見解が分かれている。金融危機に焦点を絞った本章の記述からすると,「資本の国際移動性の高度化は為替レートの変動を激化させる」と答えたくなるかもしれないが,設問の趣旨は「理論的に考えよ」ということなので,単純に答えては誤りである。たとえば,328ページの図10-1で(1)の位置が安定的かつ水平に近いのなら,(2)が頻繁にシフトしても均衡為替レートは安定的である。2つの需給曲線の相対的な傾き,どのような要因がそれらをシフトさせるかにより,結果はいろいろある。
3 「世界の中央銀行」は現在のところ存在しない。では,それを設立して「世界単一通貨制度」を採用するのは望ましいか否かを考えよ。
(解答例) 世界単一通貨制度については本章で十分説明する余裕がなかったが,要するに「ユーロ」の国際版と思えばよい。単一通貨の採用の利点は通貨交換のコストがなくなり,国際取引の利益が十分に発揮されることが最も大きい。問題点は,ユーロへの参加のためには一定の条件を満たさねばならないことからもわかるように,財政・金融政策などのマクロ政策手段を一国(一地域)が独自に採用する余地が多分に制約されることである。「開放経済のThe impossible triad」を参考にして考えるとよい。
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