編集室の窓:『書斎の窓』2010年7・8月号に掲載
昨年からの新型インフルエンザに続いて痛ましい口蹄疫の被害、と目に見えない小さいウィルスの猛威に、人間がどのような存在かを思い知らされます。困難を克服するだけでなく、その関係を探り、どこで折り合えるのかを探るのもまた科学の力なのでしょう。
動物としてのヒトと社会的な存在としての人間と双方から迫る著作が刊行されます。長い間、母親の手でなされるものと考えられてきた子育ての通説に対して、母親以外の子育て=アロマザリングを科学的に解明した『ヒトの子育ての進化と文化』に続き、『感情心理学・入門』では、人間は感情の動物といわれるほど、人間を考える上で中心的なテーマである感情を、生物学的な基盤や機能から認知や発達まで様々な視点で読み解きます。
経済分野からは『国際財政論』をご紹介します。グローバリゼーションの進展とともに新たな展開を見せる財政の国際化に、重層的ガバナンスの視点から全体像と課題を明らかにする新しいテキストです。経営分野から『組織エスノグラフィー』が続きます。習得が難しい質的調査の手の内を国際的第一人者が明かす、フィールドワークの魅力に溢れた、人間に興味のある方にお薦めの一冊です。(F)
*弊社のPR誌『書斎の窓』(月刊)に掲載されている,当部の近況案内「編集室の窓」を転載しました。