本の詳細:『交通経済学入門』で取り上げられているトピックス
竹内健蔵/著 『交通経済学入門』
2008年10月刊
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公共交通機関をよく利用される方はもちろん,マイカー派にも,はたまたもっぱら徒歩という方にとってさえ,「交通」は,現代の日常生活とは切っても切れない社会現象・社会問題だと言えるでしょう。
本書では,交通を経済理論によって読み解くことを通じて,通俗的な理解を超えたそのメカニズムに迫ります。
以下のようなトピックスを取り上げております。利用者にとっての身近な問題から,よくニュースで目にする話題,こういうことが交通と関係するの?という意外なトピックまで,ご関心のある方々にご一読をお薦めいたします。
第1章 交通経済学を学ぶにあたって
・ 望ましい交通社会とはどのようなものか。
・ 省エネルギーのためのマイカー自粛政策は正しいか。
・ 時間の価値はどうやって決まるのか。
・ タクシー料金はなぜ停まっていても上がり続けるのか。
・ 交通の自由化はなぜ進んでいるのか。
・ 運賃が上がるとなぜ利用者は不満に思い,なぜ交通企業は喜ぶのか。
・ 海運市況やトラック運賃は変動が激しいのに,鉄道運賃が変動しないのはなぜか。
・ 環境悪化に反対する人びとは環境の悪化自体が唯一の反対理由なのか。
・ 一般道路ではなぜ料金はとられていないのか。
・ 見知らぬ土地ではなぜバスを利用したくないのか。
第2章 交通サービスの特殊性
・ トラックは本当に貨物の9割を運んでいるのか。
・ 交通サービスには公共性があるのか。
・ 乗客ゼロで空気を載せて運んでいるバスは運行をやめるべきか。
・ マイカーを使う人でも不動産広告で「駅から○○分」を気にするのはなぜか。
・ 誰も利用しない道路は建設してはいけないか。
・ NHKの受信料はなぜ上手に徴収できないのか。
・ 朝夕のラッシュアワーが発生するのは鉄道会社の責任か。
・ 人びとはどうやって交通機関を選択しているのか。
・ 長距離になると人はなぜ新幹線より飛行機を選ぶのか。
第3章 交通データの分析
・ 1987年に爆発的に自動車の輸送量が増えたのはなぜか。
・ 交通事故の死者数は国際比較できるのか。
・ 日本の海運業は消滅寸前か。
・ 国内航空の規制緩和は航空機の空席を増やしているか。
・ 日本の高速道路はもう十分に整備されたか。
・ 規制緩和は事故の増加をもたらしたか。
第4章 交通の費用
・ 大学生はIT企業を作れても鉄道企業をつくれないのはなぜか。
・ 航空会社が合併したがる理由は何か。
・ 路線バス会社が関連企業に高速バス会社や観光バス会社を持つのはなぜか。
・ 航空路線でなぜハブ・アンド・スポークシステムができたのか。
・ 高速道路のさみだれ開業,地方の新幹線建設は当該区間の需要で判断してよいのか。
・ 航空会社のアライアンスはなぜ形成されるのか。
・ 東京・北海道間のブルートレインは残って,東京・九州間のブルートレインが縮小されたのはなぜか。
第5章 運賃理論
・ 石炭とダイヤモンドは輸送するとき,どちらが運賃に敏感か。
・ 昔あった鉄道貨物運賃等級表はなぜ消えたのか。
・ 通学定期を買うときになぜ在学証明書が必要なのか。
・ 道が混んでいることで怒り出すドライバーの態度はもっともなことか。
・ 希少な資源は行列で手に入れるべきか,支払額の大きさで手に入れるべきか。
・ 「最適な混雑」という言葉は自己矛盾か。
・ 混雑している高速道路を値下げすると何が起こるか。
・ 混雑にも環境にも同時に最適な料金は存在するか。
・ ピーク時とオフピーク時の交通量の格差をなくせば問題は解決するのか。
・ 朝夕のラッシュ時の需要と昼間の需要は同じものか。
・ オフシーズンでも予約が取れないホテルがなぜあるのか。
・ 独占企業の差別価格と同じ方法がなぜ歓迎されるのか。
第6章 運賃政策
・ 交通企業の「適正な利潤」というものはどうやって決まるのか。
・ 交通企業では資本の過大投資が発生するのか。
・ やる気のない交通企業をどうしたらやる気にさせることができるのか。
・ 大学の食堂がフランチャイズ方式になったらどうなるか。
・ 「足して2で割る」日本的運賃決定方式は妥協の産物か。
・ 鉄道運賃やバス運賃はなぜ上限だけを決められているのか。
・ 「初乗り運賃」というものはなぜ存在するのか。
・ マイレージ・サービスの普及は何を意味するか。
・ 自社の製品を使うなと宣伝・広報する企業が存在するのはなぜか。
第7章 規制政策
・ 規制緩和が進められた根拠は何か。
・ 上下分離方式の元祖は日本か。
・ 航空輸送産業の寡占化は規制緩和政策の失敗か。
・ 日本の規制緩和政策の本当の目的はどこにあるのか。
・ 道路四公団の民営化は本当に「民営化」か。
・ 公共交通機関は常に環境にやさしいか。
・ 「汚染者負担原則」は常に正義か。
・ 速度規制は不要か。
・ 車が安全になっても事故被害額は減らないということがありうるか。
第8章 交通投資
・ 今日の1万円は明日の1万円と同じ価値を持つか。
・ 「風が吹けば桶屋がもうかる」のが交通投資の経済効果か。
・ 新幹線開通による経済効果は○○億円」というのは本当か。
・ 投資の経済効果は誰のものか。
・ どうやって人の命に値段をつけるのか。
・ 交通プロジェクト実施前後の便益比較は本物か。
・ 大規模投資で赤字に苦しむ鉄道と鉄道開通で大もうけする地主がいるのはなぜか。
第9章 外部補助と内部補助
・ 自治体境界線上の新駅設置はなぜ円滑に進まないのか。
・ 都市の民間鉄道事業者はなぜ大規模投資をしないのか。
・ これまで赤字路線のバスはどうして維持できてきたのか。
・ 高速道路がいつまでも無料にならないのはなぜか。
・ 高速道路の料金プール制度は悪か。
・ 通学割引がなぜ国家の教育政策とはなっていないのか。
・ バス・カードと現金とどっちがほしいか。
・ 交通への補助でどの世代が得をしているのか。
第10章 交通ネットワーク
・ 利用者の合理的な行動の結果,ルートやモードの選択に何が起きるのか。
・ 道路拡幅が混雑緩和に貢献しないことがありうるか。
・ なぜ道路拡幅が鉄道を不便にするだけではなく,道路混雑を悪化させるのか。
・ バイパスの新設が交通をいっそう不便にするメカニズムとはどのようなものか。
・ ロード・プライシングはいつでも善か。
第11章 交通経済学の展望
・ 本書で学ばなかったことにはどのようなものがあるか。
・ 交通経済学の周辺領域にはどのような学問があるのか。
・ 交通経済学とともに学ぶべき学問領域は何か。
・ 交通経済学にはどのようなテキストがあるのか。
・ これから交通経済学を広く深く学ぶためにどのような心構えが必要か。