特集:環境問題について考えよう 3
今回は,近頃,新聞や雑誌,テレビで頻繁に目にする「(国内)排出量取引制度」について,有用な示唆を与えてくれる研究書を紹介します。
■ 時宜に適った注目の一冊
今年に入り「地球温暖化問題に関する懇談会」(首相官邸)や「国内排出量取引制度検討会」(環境省)が設置され,「排出権取引制度」のあり方をめぐる議論が盛んになされています。社会的関心も高まる中,絶好のタイミングで刊行されたのが,『排出権取引制度の政治経済学』です。今年の5月末に刊行され,好調な売れ行きでスタートしました。
著者の浜本光紹先生が本書のはしがきで,
「環境政策をめぐる近年の欧米諸国の動向と比較すると,日本は経済的手段の活用という点で大きく出遅れている感が否めない」
と指摘されるように,日本はようやくスタートラインに立ったにすぎません。本書では,「キャップ・アンド・トレード型」の排出権取引の先駆けとして重要視されるアメリカの二酸化硫黄排出許可書取引や,初めての国際的排出権取引制度として注目を集めるEUの二酸化炭素排出権取引制度(EU-ETS)の事例を詳細に取り上げ,政治システムやガヴァナンスのあり方にまで視野を広げて総合的に検討・評価されます。
日本でも導入が検討されている「国内排出量取引制度」の制度設計を考えるうえでは欠かすことのできない,お薦めの一冊です。
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