新刊:『環境被害の責任と費用負担』
◇環境被害に対する責任を問う◇
環境被害への事後的対策(被害補償や原状回復など)をめぐり,包括的・根源的な理論検討を行い,経済学的視点から,望ましい責任と費用負担の考え方を提示する。東京大気汚染訴訟の和解など代表的事例を組み入れ,理論と実証を統合し,環境責任の原理を探究。
目次
序 章 現代の環境問題と社会的費用論:本書の課題と視角
はじめに:なぜ事後的対策の責任と費用負担を論じるのか
1環境問題の現代的特徴と環境被害
2環境コスト負担をめぐる理論的・政策的課題
3加害過程の構造と責任論
4社会的費用論と環境コスト
第1章 環境責任,費用負担原理・ルール・制度:研究の枠組み
1環境問題に関する責任
2費用負担原理
3費用負担ルール
4制度と費用負担の実態分析
第2章 産業公害事件における費用負担:熊本水俣病を事例として
1水俣病事件における環境被害
2漁業補償
3健康被害に対する補償・救済
4公害防止事業
5地域再生・振興
6各種県債の利子について
7健康被害の補償・救済をめぐる行政の責任と費用負担
8関係金融機関の責任と費用負担
第3章 産業公害から都市・生活型公害へ:大気汚染公害と費用負担
1大気汚染の推移と健康被害
2公健制度の概要と費用負担
3自治体レベルの救済制度と費用負担
4費用負担をめぐる問題点
5自動車排ガス汚染の責任と費用負担
補論1:大気汚染公害による「未認定」患者とその被害実態
補論2:自動車排ガス汚染の事前的対策における費用負担
第4章 広域的な環境汚染と費用負担:タンカー事故による油濁被害の補償を中心に
1補償・救済制度と環境コスト
2ナホトカ号事故による環境被害とその貨幣評価額
3国際条約による油濁被害補償の仕組み
4ナホトカ号事故の被害補償
5エボイコス号事故の被害補償
6海運業界と荷主の負担割合
7国際条約による補償制度の課題
8排出源不明の場合の漁場油濁被害の救済
9油濁被害の補償・救済をめぐる責任と費用負担
終 章 「責任ある関与」にもとづく費用負担へ
1環境被害に関する責任
2求められる「応責原理」の確立
3費用負担ルールの確立に向けて
4制度と費用負担をどうするか
〈著者情報〉
除本理史 東京経済大学准教授