編集室の窓:『書斎の窓』2005年10月号に掲載
社会倫理・応用倫理を探究されている川本隆史先生が,実践と理論を架橋するネットワーカーをつとめる,有斐閣選書『ケアの社会倫理学』が,いま話題です。
現代の人間と社会について語るとき,「ケア」は欠かせない言葉となりました。誰しもが向き合わなくてはならない「ケア」。それを分かち合う制度はどうあるべきなのでしょうか。また,ケアを通して,人間の何が見えてくるのでしょうか。
本書は,ケアと社会のインターフェイスを形成する四つの領域――医療・看護・介護・教育――をカバーし,ケアの現場にコミットしている実践家,ケアに関する研究を進めている学者,それに,大学,短期大学,高校で倫理や生命倫理などの科目を担当した経験者らが,刺激的な議論を展開しています。そのなかから,ケアされる人(患者や障害をもった人,高齢者)対ケアする人(医師,ナース,介護者)の関係だけでなく,家族,地域社会,さらに政治や経済,文化を視野に収めた「ケアの社会倫理学」を展望します。
ケアという営みを根底から問い直す問題提起の書,ぜひご一読下さい。(I)
*弊社のPR誌『書斎の窓』(月刊)に掲載されている,当部の近況案内「編集室の窓」を転載しました。