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2004年9月11日 (土)

編集部員より:一期一会 これまでの編集活動を振り返って

S.I.

 人間の社会生活において,また多くの仕事の遂行においてそうであるように,編集という仕事も人と人のつながりがその基本であり,著者とのネットワークが最も重要な要素のひとつであることは異論のないところであろう。

 編集の仕事を30数年してきて,どれくらいの数の著者とお付き合いをしてきたであろうか? 少なくとも1000人以上の著者と何らかのつながりがあったと思われる。もともと著者との接触が苦手な自分にとって(今でも不得意だが),よくこれだけの方々とお付き合いできたとある種の感慨を覚える。非常に懇意にしていただいた方から,お手紙でやりとりをしただけでお顔も声も存じ上げない先生まで,お付き合いの程度は千差万別である。初めの頃はこちらの不手際でトラブルを起こしたこともあったし,それが縁でより深い関係を築くことができたことなどもあり,振り返ってみると,必ずしも平坦ではなかったが苦楽を併せ持った貴重な経験の連続であった。お付き合いの程度の差,形の違いはあれ,よい書物を作り公刊していくという共通の目標に向かって,出会い,協働し,本の完成を共に喜んできたという人としてのつながり,そのことに不思議さも感じる。

 出会いはいろいろである。学生の頃に,あるいは編集者として仕事をしていく中で,著書や論文などを通じて,あるいはマスコミなどで得たお顔や研究業績など事前の情報をもったうえでお会いすることもあるし,どのような先生かのイメージをあまりもたないままでお会いすることもある。

 そうした,イメージをあらかじめ抱いていたご本人に直接お会いし著者像を確認できるというのも,編集という仕事の楽しみのひとつである。ヘーゲル研究者で,そのきわめて緻密な時代考証と文献渉猟で著名な先生にお会いしたとき,その研究内容・方法からは想像できないあけっぴろげで豪快な性格に驚いたことこともあった。あらかじめ抱いていていた著者のイメージと実像はマッチングしたり,意外なミスマッチングでためらったりといろいろである。

 ミスマッチの面白さという面もあるし,実像で著者イメージが修正されたりすることも多いが,やはり実像とイメージが一致した著者には尊敬の気持ちを感じることが多い。あの優れた思想・論文の著者はやはり思った通りの人であったというのは嬉しいものである。

 それ以上に,畏敬の念さえ感じさせる方にも何人かお会いした。イメージが実像とマッチしているだけでなく,自分の頭の中でイメージを形成しているその思想なり感覚なり方法が,生身の一人の人間として体化されている,そんな素晴らしい方々にも分野を超えて何人かお会いできる幸運にも恵まれた。

 学問研究の厳しさの自覚と,日本社会や人間の幸せへの熱い思いや情熱,その間の緊張関係を維持し,亀裂と陸続のなかに日常の生活が自然としみこんでいるような方(必ずしも何らかの実践活動をしているとは限らない),こういう方には思想やイデオロギーの違いを超えて畏敬の念を感じざるを得ない。そのような著者にお会いできるのは編集者冥利ということ以上に,一人の人間としての僥倖といってよい。こうした方とお会いし,共通の時間を過ごすことができるのは本当に至福の時だが,またこちらの心が見透かされているようで曖昧な態度が許されない厳しい緊張の時でもある。

 こうしたさまざま著者との出会い,そしてその著書を公刊させていただくことは,編集者としてまた一人の人間として,最高の一期一会であると思う。

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