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2004年7月31日 (土)

編集部員より:『新・国際政治経済の基礎知識』が刊行となって

Y.S.

 ◆ 「できすぎ」のスタート ◆
 『新・国際政治経済の基礎知識』が,2004年7月20日,ようやく刊行となりました。

 高坂正堯先生と公文俊平先生に編集いただいた『国際政治経済の基礎知識』『国際政治経済の基礎知識〔新版〕』のコンセプトを引き継ぐ書物,としての企画のいきさつについては本書「はしがき」を見ていただくとして,ここでは編集作業における裏話を紹介しましょう。

 編者の田中明彦先生と中西寛先生に161の項目と46人の執筆者についての案をまとめていただき,執筆をお願いしたすべての先生方から執筆了解の快諾を賜ったのは,2001年の末でした。そこから刊行にいたるまで,2年7カ月の長い旅が続くのです。

 執筆依頼をはじめ,スタートはとても順調でした。執筆依頼から半年後の2002年6月25日時点で23人の先生から,9月19日には39人の先生からお原稿を頂戴しております。残る先生方は「7人」,ほぼ1割5分にすぎません。

 この2002年秋,日本政治学会が10月5日(土)・6日(日)と愛媛大学で,日本国際政治学会が11月15日(金)~17日(日)と淡路夢舞台で開かれました。執筆者の大半が,両学会共あるいはいずれかの学会に出席されます。もちろん私も両学会を聴講させていただき,ご執筆の先生方をお見かけしては,「お原稿を賜り,ありがとうございました」「いかがでしょうか,ご執筆はお進みでしょうか」と声をかけてまわります。向こうから,「ごめんごめん,東京に戻ったらすぐに送るから」と声をかけてくださる先生もいれば,あれ,さっきいらっしゃったのに,と思うまもなく姿を消される先生もいらっしゃいます。

 実は,大変なのはここからなのでした。残る「7人」が,いっこうに減りません。そもそも,今回ご執筆をお願いした先生方はお忙しい先生ばかりなのです。アメリカ,イギリス,大陸ヨーロッパ等々に在外研究に出ておられる先生もいらっしゃれば,アメリカや中国,東南アジアなどへと頻繁に出張される先生もいらっしゃいます。通常は,大学が夏休みなど長い休みに入ればそこで執筆いただけるはずなのですが,「国際政治経済」の先生方については,休みに入れば海外にお出かけになる,と思っておかねばならないのです。その意味では,ここまでが「できすぎ」なのでした。

 冬休みが過ぎ,春休みに入って,思いがけず私自身が,京都編集室勤務から本社書籍編集第二部(東京)勤務へと異動になりました。4月からの新学期に向けていろいろな仕事が同時並行に進んでいるこの時期の引っ越しは,まことにきつい。しかも,職場も自宅も,なのです。なにより,お原稿や校正刷をなくさないように気をつけねばなりません。住居探しなどで京都―東京を新幹線で何度か往復する際,お原稿あるいはご校閲済の校正刷とフロッピーについては,今回はこの本の,次回はあの本のと振り分けてそのつど鞄に入れ,京都から本社まで自分で運びました。

 ◆ 「私が最後でしょうか」 ◆ 
 そうしたなか,まだまだお原稿をいただけない先生のいることがわかっていながら,「私が最後でしょうか」といたずらっぽく書き添えて,かねてお世話になっているA先生がお原稿を送ってくださり,ようやく残り「4人」となりました。他方で,すでにお原稿を頂戴しているB先生のように,「執筆後,時間が経過したのでデータ等を更新したいが,可能ですか」とたずねてこられる先生も出てきました。

 しかしながら,この残る「4人」はと見れば,当初からなかなかお原稿をいただけないのではないかと予想された「強者」が,顔をそろえているのです。B先生に「ぜひ調整をお願いいたします」と即答したいものの,「4人」の動向次第では,さらに時間が経過し,再度の更新が必要となる可能性もないではありません。やむなく,「最後の先生からお原稿をいただけるめどがたちましたら,すぐにご連絡申し上げます。そこで,一気に更新作業をお願いできますでしょうか」とお答えするにとどめたしだいです。

 黄金週間があけたころ,本書の執筆者ではありませんが,常日頃から一度本格的なお仕事のお手伝いをと熱望しているC先生と,昼食を一緒させていただく機会がありました。C先生は,「実は先日,ある出版社から多数執筆の本を出したのだけれど,一人の先生のお原稿がなかなか出なくて刊行がずいぶん遅れ,私は状況変化にともなう手直しを余儀なくされました。ところが担当の編集者は,『○○先生の原稿が遅れまして』と言うだけで,『申し訳ありません』の一言もない。彼はもしかしたら,自分は(その先生の)被害者だと思っているのかもしれないが,私や原稿を先に出した他の先生が〈被害者〉であることはたしかだとしても,彼は遅れた先生から早くにお原稿をいただくべき担当者なのだから,遅れたことに責任はあっても,〈被害者〉ではないはずだ。君はどう思うか」とおっしゃるのです。

 実に耳の痛い話で,今回のような場合でも,なかなかお原稿をいただけない先生をうらみがちです。でも,その先生から速やかにお原稿を頂戴し,スムーズに刊行することこそが私たちの仕事なのです。
 C先生はまた,「一番お原稿が遅れた先生と,かえって一番仲良くなることはありませんか」ともおっしゃいます。これもまたそのとおりで,督促を兼ねて連絡の密度は格段に濃くなりますから,その後に親密にさせていただくことも多いのです。ただ連日の督促に,中にはお原稿をくださる直前には,ついに電話の「プルルルルーン」という音が「セ・イ・カ・イ・でございまーす」と聞こえはじめたとおっしゃる先生もいらっしゃいますから,そうした先生は二度とごめんやと思われるかもしれません。

◆ せめて大晦日のうちにお届けしたい ◆
 このころ,記述内容の重複ということも起こりました。D先生がお書きくださった項目Xの内容と,編者のお一人E先生がお書きくださった項目Yの内容とが,重複していることがわかったのです。E先生に相談したところ,「これは,(編者として原稿全体を見ている)私が書き直すべきでしょう」と,即座に自らの項目を書き直し,解決してくださいました。E先生の誠実な対応には,まことに頭が下がります。
 さて,執筆依頼後2度目の夏休みが過ぎて,ようやくにして「4人」の強者からもお原稿を頂戴でき,2003年9月24日(水)から10月半ばにかけて,印刷所に原稿を入れました。ちょうど,秋の学会シーズンです。10月4日(土)・5日(日)と尚美学園大学で日本政治学会が,10月17日(金)~19日(日)とつくば国際会議場で日本国際政治学会が開かれました。

 1年前の学会でとは一転し,今度は先生方のお姿をお見かけしては「作業が遅れ,申し訳ございません。いま入稿したところです」とお詫びを申し上げ,状況を報告してまわります。それでもF先生のように,「来年の新学期には教科書として使いたいのだけれど,間に合う?」とおっしゃってくださる先生もいらっしゃって,心が和みます。

 さて,こうした161項目という多数の項目を46人という多数の執筆者にお書きいただいた場合,先生方に校正をお送りするのがたいへん手間のかかる,一大仕事なのです。校正刷の161項目をすべて切り離し,46人の先生の担当項目ごとに分けて,先に宛名を記しておいた封筒に入れていきます。初校ご校閲に際してお願いすることは,先生ごとに,項目ごとに異なります。万が一にも,入れ違えるようなことがあってはなりません。さらに,封筒ごとに重さが異なりますから,郵便料金もそれぞれ異なります。

 ここで威力を発揮したのは,料金受取人払の返信用封筒でした。先生方が校正をお返しくださる際,大きく手直しされた部分をワープロで入力され,その部分をフロッピーに収めて同封くださった場合など,想定とは異なる重さになりますが,料金受取人払なら,そうした場合の料金がいくらになるかの心配は無用なのです。この料金受取人払の返信用封筒は京都支店にはなく,このときは本社に来ていてよかったとつくづく思ったものでした。

 しかし,先生方に初校をお届けするのは,心ならずもお正月直前になってしまいました。元旦に,年賀状に先駆けて「急ぎご校閲をお願い申し上げます」という初校が速達で届くことのないように,せめて大晦日のうちに届くようにと,アメリカやイギリスへの数通のエアメイルも含め,年末の夜遅くに東京中央郵便局まで持っていきました。

 初校では年明け早々にG先生から,「『アフガニスタン戦争』と『湾岸戦争』については,その後の事態の推移にともない,『新アフガニスタン戦争』と『イラク戦争(第二次湾岸戦争)』の項を別途たててきちんと言及したほうがいいと思います。もしそう判断されるなら,急いで執筆しますがどうでしょうか」との,まことにありがたいお申し出を賜りました。実は,初校においてはご執筆後の時間の経過にともない,多くの先生に最小限のご調整をお願いいたしましたが,いかに厚かましい私といえども,さすがに申し訳なくて新たな項目のご執筆まではお願いできませんでした。それを先生の方から,「必要ならば書くよ」とおっしゃってくださるのです。すぐさま編者に報告し,ありがたく2項目の追加執筆をお願いいたしました。G先生,ありがとうございました。あらためてお礼申し上げます。

 今回,執筆依頼の前後には9.11テロ事件や新アフガニスタン戦争,さらにイラク戦争があり,初校・再校ご校閲の段階ではNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大やEU(ヨーロッパ連合)の拡大などもありました。今秋にはアメリカの大統領選挙もひかえていますし,国際政治経済の動きの激しさは,まさに「激動」なのです。

 ◆ 郵便の事故にそなえ必ず控を ◆
 再校時には,怖いことに郵便の事故もありました。H先生に再校ご校閲を督促申し上げたところ,出張先のアメリカからメールをくださって,出張直前にご投函くださったとおっしゃるのです。届いていない旨を返信メールでお知らせしたところ,数日後に帰国されるとのことでしたから,すぐさま控のコピーをお送りし,二度手間をお詫びしつつ再度のご校閲をお願いいたしました。速達が届かないという事故は,私自身今回で3度目です。EMSでは,ドイツやイギリスなどとの間でこれまで4度あり,校正をお送りする際には必ず控をとることの大事さを再認識いたしました。

 他方,「夕方の飛行機に乗る前に再校を投函します」というメールをくださったものの,なかなかその再校が届かず,まさかあの「飛行機」は海外便で,投函できずに持っていかれたのではと心配していると,案の定「すみません。成田で投函しようと思いつつ,うっかり機内に持ち込んでしまいました。先ほど飛行機を降りてすぐにエアメイルで送りましたので,数日お待ちください」と,海外からメールをくださったのはI先生でした。この再校は,I先生がご帰国された後,数日して私の手元に届きました。

 ◆ 極上の「純米吟醸酒」です ◆
 こうして,笑い話に近いエピソードをともないながら,『新・国際政治経済の基礎知識』はようやく刊行となりました。編者が「はしがき」にお書きくださいましたように,本書においては,高坂先生・公文先生をはじめとする諸先生方がおつくりくださった『国際政治経済の基礎知識』『国際政治経済の基礎知識〔新版〕』という見事な革袋に,46人の現代日本国際政治学界の若い力が極上の「純米吟醸酒」をついでくださった,と確信いたします。
どうぞ,じっくりご賞味ください。

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