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2004年3月31日 (水)

本の詳細:『心理学』 はしがき

無藤 隆・森 敏昭・遠藤由美・玉瀬耕治/著
『心理学』(New Liberal Arts Selection)

2004年3月刊
→書籍情報はこちら

「はしがき」を掲載いたしました。

 

〈はしがき〉

専門性を十分に備えた本格的な概論書として,『心理学』をここに刊行する。

いまや,心理学は多方面に発展し,大学の教育においても,心理学部・心理学科が多く誕生している。専攻する学生も増えてきた。心理学の専門的な資格も,臨床心理士をはじめとして,いくつも生まれ,学部や大学院の教育を通して,心理学を生かした職に就く人も多数になってきている。一般の方々の心理学に寄せる期待も興味も高くなり,その解説書も平易なものから専門的なものまで多々出版されている。

そのようななかで,あえて一書を投ずる意義は何か。本格的かつ専門的な参考書としてしっかりとした体系的な知識を身につけて欲しいと願うからである。入門的な本や特定のトピックを取り上げた一般向けの本でものたりなくなったときに,本書を通してその基礎を理解し,その上に立って,専門的な知見をその論理を跡づけつつ把握し,さらに,その後の自分なりの研究や心理実践に進むことができるようにと執筆を行った。

すなわち,次のような方針で本書を構想した。

  • 心理学の学問を大きく4つのフィールドで分けて,述べることとした。認知心理学(知覚や脳の研究を含む),発達心理学(生涯発達や学校教育を含む),社会心理学(自己や進化心理学の研究も含む),臨床心理学(その基本と心理テスト等を含む)である。心理学には,それらだけで尽くせない多くの分野があるのだが,しかし,その4つが現在,研究が活発であり,また学部生などの基本的な知識の大事な要件となっているからである。
  • 入門的な知識から専門的な知見をつなぐところを,体系的に述べていく。初学者でも努力すれば理解できるように,基本的なところから解説する。だが,それにとどまらず,学部の専門から大学院1年生くらいで学ぶことを主眼としていく。
  • そのために,通常のテキストの数倍の分量をもって記述した。各フィールドが単行本1冊くらいの規模をもつ程度になっているので,読み応えがあるだろう。さらに,体系的な記述から漏れる部分はコラムなどで補い,最新の知見なども入れ込んである。
  • 心理学は,たんに専門的な知見を学べば理解できるというわけにはいかない。いかなる方法により研究を進めるかということが,決定的に重要である。そこで,実験法や質問紙法,観察法などの方法論の要点を示し,心理テストの紹介や,統計法の簡単な解説を加えた。さらに,その実例として,第1章では,実際の1つの研究の紹介を通して,いかにして研究を進めるものかを理解できるようにした。
  • 臨床心理士の希望者が増えたことに応じて,その勉強の基礎となることに力を注いだ。臨床心理学自体の解説にかなりのスペースを割いている。それに加えて,臨床心理学の周辺領域としての人格心理学や発達心理学の知見を詳細に紹介している。臨床心理学や心理臨床実践が孤立してそれだけで成り立つ領域ではなく,心理学の広範な研究成果の上に科学性を備えてきていることをわかって欲しい。さらに,学部から大学院の1年という時期には,そういった幅広い勉学を通して,科学的な基礎に基づく臨床心理学の意義と面白さを理解することが大切であろう。

以上のような意図をもち,本書の執筆に数年をかけることになった。その間,京都において数回の会合をもって,打合せ,またメールや郵便でのやりとりを通して,章の間の緊密な関連が生まれるように努力した。さらに,コラムや章末の文献案内,練習問題等を通して,本書の内容を各自が発展できるようにも心がけた。

終わりになったが,有斐閣の編集部の新井さんと櫻井さんには企画から最後の校正の段階のいたるところで,大枠から細部の文章表現まで数多くの指摘を頂戴した。本書は少しでも読みやすいものになっているとすれば,編集部の功績は大きい。記して感謝したい。

 2003年12月
                                      著者を代表して
                                        無 藤  隆

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