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2003年12月31日 (水)

本の詳細:『政治学』 はしがき

久米郁男・川出良枝・古城佳子・田中愛治・真渕勝/著
『政治学』(New Liberal Arts Selection)

2003年12月刊
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「はしがき」を掲載いたしました。

 

〈はしがき〉

大学で講義をしていると,学生から「政治学って難しい」という声をよく聞く。では,どの科目が簡単なのと問い直してみたくなることもあるが,学生の話をよく聞いてみると,政治学では権力とかイデオロギーといった抽象的な話が出てくるけれど,それが実際の政治とどう関係するのかよくわからないという理由が多い。しかし,他方で,政治学者ではないけれど,政治のことを熱心に語る人は,テレビの中だけでなく世の中にたくさんいる。著者たちが政治学者であることを人に明かすと,日本の政治について議論を挑まれたりすることもよくある。それが飲み屋であったりすると,結構面倒くさい。会計学や刑事訴訟法を専門にしている同業者には,そういうことはあまりないようだ。会計基準や訴訟手続きと異なり,政治について多くの人はそれなりの考えや意見を持っており,酔っぱらっていても議論できるからであろう。政治学の試験の解答に,設問の趣旨とは関係なく,日本の政治の現状を熱く語る答案が時々出てくるのもこのような事情だろう。

政治学が難しいという印象と,政治についてはだれでも何かは語れるという事実は,政治学の勉強の困難さを示している。政治学は,もともと哲学,歴史学,心理学,社会学などとも交錯する総合的な知識の体系であった。そこには,政治哲学から投票行動,国際政治経済から地方行政というように,幅広い対象が含まれてきた。しかも,政治学は近年,その研究の発展にともない専門分化が著しくなってきている。政治学のさまざまな専門分野を対象とした教科書が多く出版され始めたことは,その反映であろう。政治学に関心を持つ学生が学ぶべき内容も多岐にわたるようになった。その結果,政治学で学ぶ内容と日々生起している政治現象がどのように関連しているのかを理解することは,ますます難しくなってきたともいえる。これは,学問の発展のある程度必然的な帰結である。しかし,専門科目の中身が全体としての政治学の中でどのような位置関係にあるのかがわからなければ,せっかく難しいことを学んでも,政治への理解を深めることはできない。政治学は難しいなあと言いながら,政治についての素人談義を続けることになってしまうかもしれない。

本書は,政治学諸分野の知識や考え方を,政治学全体の中に位置づけて学んでもらうことをめざして作られた。この企画は,もともと政治学の全領域をカバーするような教科書を作りたいという有斐閣と編集者の熱意によって動き出した。そのために,専門分野の異なる私たち5人の政治学者が集まった。1999年のことだった。しかし,それぞれが自分の専門分野のことを勝手に書いたのでは,その目的は達せられない。そこで,二つの方針をとることにした。第1は,それぞれの専門分野で学ぶべき内容を可能なかぎり現在の日本を題材として説明すること,第2は,政治を主権者である国民が本人として代理人を雇い,共通の目的を実現することととらえる本人―代理人論の立場から,それぞれの専門分野の知識や考え方を整理して説明することである。

このため私たち5人は,学会や研究会などさまざまな機会を利用して,5時間を超える会合を十数回もち,全体の構成についてはもちろん,それぞれの担当章の草稿を全員で読み,その内容について議論を重ねた。この会議は本書の作成に大変有意義だったばかりではなく,それぞれの分野での最新の議論の意義について学べる楽しい機会でもあった。最後の会議では,これで終わるのは寂しいので,この教科書を持って全国の大学へ出前講義に行こうとか,本人―代理人論を本格的に研究するプロジェクトを立ち上げようとかいった話で,大いに盛り上がった。

この共同作業の結果生まれた本教科書が,政治学をこれから学ぼうとする人の役に立ち,政治学も政治もおもしろいと感じてもらえれば,私たち著者にとってこれ以上の幸せはない。
  

 2003年10月31日
                                        著者一同

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