編集室の窓:『書斎の窓』2001年6月号に掲載
今月は,経済学・心理学の両分野から,意欲的な2冊を選書でお届けいたします。
1990年代の「失われた10年」からの脱却の鍵として,IT化への対応と中小企業の活性化が叫ばれています。関満博『地域産業の未来――21世紀型中小企業の戦略』は,30年近く中小企業と地域産業の現場をつぶさに見続けたきた著者が,蓄積された職人技能と科学技術の発展という伝統と革新の間で揺れ動く技術集積の世界や,アジアを中心とした急速な中小企業の海外進出の実態を丹念に描ききり,優れた同時代の証言の書となっています。日本経済の今後を考えるうえでの示唆に富む良書です。
もう1冊は,小倉千加子『セクシュアリティの心理学』です。これまで「ジェンダー」視点の心理学はさまざまな形で扱われてきましたが,「セクシュアリティ」を正面に据えた心理学としては始めての試みの書です。「セクシュアリティはジェンダーと比べてはるかにセックスに従属しておらず,生殖という視点からみればセクシュアリテイはセックスの『正反対』にある」という,ショッキング(?)な見方は,今後のフェミニズム運動を考えていくうえで,きわめて重要な視座を提供しています。 (I)
*弊社のPR誌『書斎の窓』(月刊)に掲載されている,当部の近況案内「編集室の窓」を転載しました。
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